« つくば市にて | トップページ | NBAバレエ団『死と乙女』 »

『無戸籍の日本人』

Photo_11
井戸 まさえ 著、集英社 (2016/1/4)

男女共同参画センターで借りて読んだ。
日本に、戸籍を持たない人が1万人以上いるという。出生届が出されず、存在が行政に登録されないまま、「無戸籍」で生きている人達は…義務教育も予防注射などの行政サービスも受けられない。

著者は、離婚後に早産で産んだ子どもの出生届けをしにいくと、「父親欄に前夫の名前を書け」と言われて呆然とする。「離婚後300日以内だから」だと(悪名高い「民法722条」の離婚後再婚期間300日ルールによる)。
「前夫とはずっと前から別居している。調停に時間がかかって離婚が遅くなったし、早産だ」と説明しても「離婚のペナルティ」だと言われたそうだ。偉そうだね、役所の職員。
裁判を起こすが、裁判長から「子の父親は、国が決める」と言われたと。「子どもにとっての最善」を選ぶことが重要なのに、おかしなことだ。

著者はこのことをきっかけに、これまで1,000人以上の無戸籍者の相談を受けて戸籍を作る手助けをしてきた。それらを本書で紹介している。

中でも成年の場合は深刻。就職もできず、口座も開けず、結婚ができない、無戸籍の子どもを産むことにもなるなど、無戸籍・貧困の連鎖から抜けられない場合が多い。重い内容で、読み進むのもこうしてブログにまとめるのにも、時間がかかった。

無戸籍の原因は、「300日ルール」だけではない。DVから逃げてきた女性、産院に出産費用が支払えず出産証明書をもらえなかったというケースもある。住民票がなくても、生活保護の申請と障害者手帳を受け取れたケースが紹介されてもいる。

平成19年に、総務省から「無戸籍でも住民票を発行可」、厚労省からは「住民票がなくても健康保険証や年金もできる」といった通知が出たが、自治体の窓口でそれらを知らずに門前払いをくわせられる例が多い。

DNA検査で父親が特定できる現在でも改正されないままになっている「民法722条」について、 著者は県議⇒衆議院議員となって改正に挑んだが、保守派に阻まれた。その間のことも語られている。最高裁判所が違憲判決を出したので、改正が待たれるところだ。

中には身勝手な親もいる。子どもができたら困る状況で避妊せずに次々と産み、届けない。是枝監督の映画『誰も知らない』(2004年)で有名な「巣鴨子ども置き去り事件」(1988年)のような例だ。

日本人の妻とイギリス人の夫の間に生まれた二重国籍をもつ子どものケースでは…イギリスでは再婚禁止期間や非嫡出子を規定する法律はなく、婚姻と関係なく父親を登録できる。「国が推定する」日本とは違い、子の出生ごとに父を決められるのだ。
この場合、日本では「2国間の法律上の父親が違う」として、父親欄に「未定」と書いて出生届は受理された。
子ども本位に考えたら、イギリスの方がいいに決まっている。

終戦後、民放改正のために奔走した当時の民法の大家、我妻 榮は「家制度」「戸主」「家督相続」などを廃止することに成功したが、保守派の反対で「氏」は残ってしまったという。

« つくば市にて | トップページ | NBAバレエ団『死と乙女』 »

」カテゴリの記事

コメント

コメントを書く

コメントは記事投稿者が公開するまで表示されません。

(ウェブ上には掲載しません)

トラックバック

この記事のトラックバックURL:
http://app.f.cocolog-nifty.com/t/trackback/1178763/65672825

この記事へのトラックバック一覧です: 『無戸籍の日本人』:

« つくば市にて | トップページ | NBAバレエ団『死と乙女』 »

2017年7月
            1
2 3 4 5 6 7 8
9 10 11 12 13 14 15
16 17 18 19 20 21 22
23 24 25 26 27 28 29
30 31          
無料ブログはココログ